今回は漫画の基礎にして奥義を解説します。セリフです。
とりあえず結論から。
キャラのセリフは漫画の奥義です。セリフさえよければ、ストーリーがつまらなくても読める漫画になります。私の得意分野です。
すべてのサブカル表現者に参考にしていただける自信がありますので、どうぞ見ていってください。
声優さんってすごいですよね。
キャラクターの台詞等に力とか生命とかなんかそういったものを宿らせることすらできるスキルを持つ人たちです。
その表現力は、すべての陳腐な表現を無効化する力があります。
ですが、多くの漫画家にとって漫画をアニメ化前提で作ることはできないはずです。
そのため、作者の頭の中ではセリフの抑揚やイントネーションが7色あったとしても、文字として同じ字面を連発したり同じ表現を複数の人物が使うことはできません。
必要な説明セリフすら、キャラや状況によっては喋らせることができないなんてことすらあります。
なぜなら、それらは陳腐な表現の代表的なものだからです。つまり、
・このセリフ、説明的すぎわろたwww
・あれ?その熟語別の人物も使ってたけど、流行ってるのかな?
というのを、読者に思わせてはいけないわけです。
このセリフ、説明的すぎわろたwww
というわけで早速例を見てみましょう。
拙作同人誌「昔はカッコよかった」から、いつもビクビクしているお姉ちゃんが裸で廊下を歩いているのを見つけて驚くシーンです。
陳腐な表現がないか、探してみてください。
陳腐表現を探せ!
見つかりましたか?
陳腐な表現があったと思った方、特に問題はなかったよ?という方いらっしゃったのではないでしょうか。
個人的にはこのセリフ回しは及第点です。しかしほんの少しの改良でキャラクターの性格を追加で表現できます。
修正箇所↑
修正後↓
弟に説明セリフを喋らせました。
これにより
・裸でいたことの言い訳がうまくできない姉
・言い訳できていなくても姉の言いたいことを察することができる弟
というキャラクター性、二人の関係性が表現できました。
もし姉がもう少ししっかりしたキャラクターであったのであれば、身振り手振りでバスタオルがないことを(絵で)表現してもよかったと思います。
読者には大体察しがついた上で、弟が正解を喋ればOKです。察しがつかなかった読者にも姉の身振り手振りの意味が分かります。そうしてすべての読者が違和感なく、もしくはすぐに違和感を解決した上で漫画の続きを読み進めることができます。
そうすることで漫画表現としての台詞回しは、大分上等に見えると思います。
漫画は絵も使えてしまうということが重要になってきますね。絵で説明できることは、絵で。
ちなみに続きはこんな感じです。
上記のキャラクター性をこれでもかと読者にぶつけました。
姉に対して話しかけているのに姉と目を合わせていない所など、絵とセリフの食い違い表現も入っていますが読者にはその理由が容易に想像できるため、正解は誰も喋りません。(特に重要な表現というわけでもありません)
読者が分かっている正解や、特に重要でない表現は、その理由を説明しない。
ただし、正解や理由を表現しないことは、ともすれば説明不足に陥るので注意が必要です。
以下のシーンは拙作の漫画ネームです。ちょっと読んでみてください。
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よくある人生2度目系の漫画です。
これ、大規模な過去回想に入ったことを表現しようとしました。
ページをまたがった時に、
・キャラクターの目つき
・頬の傷跡の有無
・枠線の形状
を変化させ、この3つの変化により過去回想に入ったことをいちいちセリフやテロップで説明しなくても読者に気づいてもらえると考えました。
が、多くの方に気づいてもらえませんでした。やっちまったぜ!物語の根幹なのにな!!
絵で表現できることは、限られてきます。
結局、この時はちょっと陳腐だな~と思いながら説明セリフを追加してその場しのぎをしました。
正解や理由をはっきりと端的に述べてしまうことは、陳腐と言われかねません。
しかし、ストーリー上必要な事象の正解がわからないことに比べれば、多少陳腐であることなど問題にもなりません。
それでも、漫画の奥義を極めるためには譲れないポイントでもあるのです。
表現者の皆さまは、この狭間で悩み続ける必要があるのです。
以上は、説明しすぎによる陳腐表現についてでした。
・あれ?その熟語別の人物も使ってたけど、流行ってるのかな?
拙作から丁度よい塩梅の悪い例が用意できなかったので、同じ特殊表現を繰り返すとどういう意図になってしまうかを解説します。
この時、弟のキャラはお姉ちゃんがビクビクした状態になってしまっていたことを「転んだ」と表現しました。
お姉ちゃんはその言葉の意味を理解しているので、「転んでよかった~」と、その特殊表現を使用して弟に返事しました。
この場合、「転んだ」という表現は非常に特殊なので、この会話を聞いていなかった他の人物がこれを使うことはできません。
例えば、姉がこのあと立ち直るようなストーリー展開だったとして、両親が後に姉のことを振り返った時に、
「お姉ちゃんは一度転んでしまったけど、立ち直ってよかった」
などと表現してはいけません。
読者は、
あれ?その表現は姉弟が使っていた表現だけど、その表現流行ってるのかな?
と感じかねません。もしくは
あれ?もしかして、姉弟の会話を両親は聞いていたのかな?
と感じるかもしれません。
そのどちらでもないのに両親が同じ特殊表現を使っていたら、
あれ?もしかして語彙力のない作者なのかな?
と思われかねません。この時、これは陳腐な表現となります。
当然、本当に流行っていたり、会話を聞いていたのであれば上手な伏線になりますが、この物語でそういったストーリーにしないのであれば、誤解を生まないために該当の特殊表現は使ってはいけません。
ちょっとうまいこと言った感じの言い回し、キザな言い回し、あまり使わない熟語を使った際には特に気を付けなければなりません。
「こいつにこの絵がかけるとは思えねえ!」(緻密かつ壮大な犯罪に対して)
「~~~たぁ言語道断!」(四文字熟語)
とかそういうのですね。
・その他 声優の力に頼らないために
声優でなければ気持ちよく読めない語感や語呂の悪い文字表現はできる限り避けましょう。
熟語で解決できるときは、そうしましょう。
例をどうぞ。何か悪いことした人を罰しようとしてる感じの場面です。
ん?なんか、ん?
(語彙力のないキャラなのかな?それとも作者に語彙力がないのかな?)
と思いますよね。じゃあ、なんかとりあえずそれっぽい熟語にしましょう。
うんうん。まあ、そういうセリフもあるでしょう。
でもなんか弾劾会議とか語感悪くね?そもそもそういう意味の言葉ってあるの?
googel先生ーー!
それや!
うん、すっきりしたんじゃない?
・最後に
今回、キャラクターの台詞についてNGリストの形で解説しましたが、それを
改善したりしなかったりすることによって、セリフに多くの意味を持たせたり、伏線としても使える心の機微を表現できることに気づきましたか?
それがサブカル文章力の奥義になると、私は考えています。
キャラの心情、キャラの持つ知識経験さえ作者が分かっていれば、NGに抵触するのか否かは判断がつくはずです。
まずは陳腐でもいいのでキャラにセリフを喋らせ、それが陳腐になっていないか確認をし、キャラの心情知識経験に基づき修正する。それを繰り返せば、あなたのセリフパターン化ができてくるのではと思います。
ネームを考える際、頭の中で自分のキャラたちの掛け合いをアニメのように再生してそれを漫画に起こしている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そのアニメでは違和感のなかったセリフ、文字に起こすと陳腐な可能性がありますので注意してください。
自分には文章のセンスがないと自分に絶望している方、上記をまず試してみてください。
センスが最も必要な気づきの部分はこの記事で解説しました。この記事を読んだなら、あとは実践&改善です。
以上、参考になりましたら幸いです。
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